打って、守って、恋して。
北海道から東京へいきなり飛ぶと、その暑さと湿度の違いに頭がクラクラするのは分かってはいた。
連日、全国ニュースで「都心部ではまた今日も猛暑日を記録し…」や「これで十五日連続の猛暑日です」などという、暑さを全面に押し出したものを見てしまったので、ある程度の覚悟はできていたはずなのだ。
だが、しかし。
道産子に、関東の日差しはつらい。
「あっつぅーーーい……」
女優がかぶるようなつばの広い帽子をかぶった凛子が、吹き出す汗をハンカチで押さえながらげんなりした表情を浮かべる。
その隣で私もパタパタと扇子で仰ぐものの、ただひたすら熱風が降りかかるだけで「涼しい」という単語は出てこない。
「ダメだ、口から暑いしか出てこない……」
「凛子……禁句にして」
「だって暑いんだもん!」
さっきからもう何杯目になるのかというアイスコーヒーを飲みながら、凛子が携帯で時間を確認する。
「よし、もうすぐ開場時間だよ」
「朝からこんなに暑いなんて、東京の人たちは大変だね。私だったら干からびてる……」
アウトドア用のハットをかぶっていた私も、アスファルトから照り返してくる容赦ない熱に弱音がこぼれた。
東京に来て三日目。
毎日毎日「暑い」を繰り返す私たち。ここ数日で確実に日に焼けた。
肝心の都市対抗野球大会の方は山館銀行が順調に勝ち進んでいて、まさに今日は準々決勝である。
今日勝てば明日が準決勝、明後日は決勝。ギリギリ夏休みを使い切れる形になる。
さすがに準々決勝ともなると、観戦しに来る人たちが多くて驚いた。東京ドームシティに人がごった返ししている。
「この人の多さにもやられるね」
「早く中に入りたいー!」