打って、守って、恋して。
一球目を、ピッチャーが投げる。ストライク。
見送った藤澤さんは、いったんバッターボックスを外れて素振りを一回。
また肩を回して戻る。
ストライクが入っただけだというのに、大歓声を上げる相手チームの応援団。団結しているのが分かる。
ピッチャーがモーションに入ると同時に、藤澤さんもバットを構えた。
二球目、ボール。
息が詰まって、勝手に苦しくなってしまう。
こんな緊張感の中で、彼はいつも試合をしているんだ。
三球目、ストライク。再び大歓声が上がる。
あえて見逃したのかそこまでは分からないけれど、藤澤さんの表情はずっと変わらず感情が読めないものだった。
「柑奈、もしも今日負けたら、あと二日なにする?」
こんな時に唐突にそういうことを聞いてくる凛子の神経を疑いかけたが、彼女は彼女で緊張を紛らわせようとしているらしい。
隣を見たら、小難しい顔をしていたからだ。
「そんなの決まってるでしょ」
「え、なに?」
「ここに来るのよ」
「…………負けたとしても?」
私は手を組んで胸の前で合わせたまま、グラウンドを見つめて笑った。
「─────きっと、絶対、いま打つから見てて」