打って、守って、恋して。
ただのファンの一部に過ぎない、私の存在。
いや、いいんだけど。ファンなんだけど、たしかに。
でもなんだろう、この喉のあたりにつっかえるモゾモゾした感情。
冷たいアイスティーで流してしまいたくなった。
凛子が首周りに絡みつく自身の髪の毛をうざったそうに何度も払いながら、ズズッとストローで音を立ててアイスティーを飲み込む。
「栗原は来年からはプロ行っちゃうだろうし、もう遠すぎて近づけなくなるなぁー!大会はあと二つ残ってるけどさ〜」
「あれ?あと一つじゃないの?八月下旬に日本代表の……」
私の記憶が正しければ、今の都市対抗が終わったらわりとすぐに日本代表のアジア競技大会があるはずだ。
シーズンとしてはそれで終わりじゃないのか?
不思議に思って訝しげに彼女を見ていたら、凛子は違うよーと首を振った。
「十一月に、大事な日本選手権が残ってるよ!日本選手権は十月のドラフト会議でプロ入りが決まった選手とかも出場してて、見応えあるんだよねー」
「うわぁー、まだそんなに試合あるの?みんな大変だね」
「京セラドームだからさすがに遠征するにも遠いし、CSでしか放送されないから、速報をひたすらチェックするしかないんだけどさ」