打って、守って、恋して。
彼との距離は、少しずつ
凛子は想像通りの反応をした。
二日酔いのせいなのか、昨日の夜の出来事を聞いたからなのか。それはそれは真っ青な顔をして、これでもかというほど目をひん剥いていた。
「ああぁ、死にそう。恥ずかしくて死ねるなら私いますぐ死んでる」
「人は恥ずかしさでは死ねないから大丈夫」
落ち着いて返事をした私は、駅の中に入っている多数のお店を見て回りながら凛子に尋ねる。
「それで?どれにするか決めた?」
「決まるわけないよー。藤澤のこと何も知らないもん!柑奈の方が分かるんじゃないの?好きな食べ物とか言ってなかったの?」
「野球の話ばっかりでそんな話はまったく……」
「もー!だめじゃーん!」
一人頭を抱えて悶絶する凛子は、昨日とまったく同じ服で背中を丸めていた。
昨日、あのままうちに泊まった凛子は朝まで一度も起きることなく爆睡。
目覚めた彼女に事情を話したらみるみるうちに顔が青ざめていき、酔っ払いの介抱に付き合ってくれた藤澤さんにお礼がしたいと言い出したのだった。
とりあえず定番で菓子折りを……ということらしいのだが、種類がありすぎて選べないようで、さっきから行ったり来たりを繰り返していた。
二日酔いで頭痛がするのか、しきりに額の横あたりを押さえながら凛子が歩き回っている。
そんな彼女がなんとなく手に取っていたのは、道内でも有名なメーカーのチョコレート菓子だった。