特別―Merry Christmas―
「クリスマスを特別な誰かと特別に過ごしたい人にはそう過ごしてもらって全然構わないんです。むしろそういう日なんだからそうしてくださいって感じで。私は特に予定がないので仕事しますから、その代わり、私の特別な日は私にもそうさせてくださいねって」

「特別な日?」

「誕生日とか」

「いつ?」

「ちょうど来月です。24日」

広田さんは、興味無さそうに「へー」とだけ呟くとスマホを取り出して、操作を始めた。
思いがけず誕生日をアピールできたと思ったけれど、効果はなかった模様。


操作を終えた広田さんが顔を上げた。

「柳瀬の『その代わりー』ってのは俺にはないけど、今日は特別に過ごしたい人が特別に過ごしたらいいってのは分かる。でもさ、結局、柳瀬には今日を一緒に過ごす特別な誰かがいなくて寂しいって話でしょ?」


……この人は本当に分かってくれたのだろうか。
でも、完全に否定はできなくて、私は少しむきになった。

「全然分かってないじゃないですか! そんなこと言ったら広田さんだって!」


広田さんは悪戯っぽく、でも、さっきより優しい笑顔を作った。


「俺は違うよ?」
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