【短】分かって気付いて傷付けて…
「ねぇ、煌?本当にいいの?」

姉の優が心配そうにそう聞いてくる。
彼のことはなんでも話してきた仲だから、心の底から心配してくれるのは分かってる。
だけど…。

「いいんだよ、これで…」


私はなんでもない顔をしてそう返した。


本当はまだ未練があったけれど、私はそれに気付かないフリをして、ただただ前だけを見つめ続けた。



そして、卒業式当日。


私は決定的ワンシーンに遭遇する。
彼と彼女が幸せそうに微笑み合って、歩いているところに…。

ザッと身を隠して、息を殺す。
全身の血が沸騰してしまいそうだった。
でも、不思議と涙は出なかった。

あんなに苦しいと思っていたはずなのに。
私はそっと踵を返して、その場を離れた。

これで、何もかも終わりだ。
そう思えば、何かがスッと吹っ切れたような気分になる。


私の時間を、これからは過ごそう。
今度はもっとちゃんと…自分のことを見てくれる相手を見つけよう。
彼なんかよりもずっとずっといい人に…恋をしよう。

そう心に誓って、私は学校を後にした。

春休みの余韻になんて浸っていられない。
新居での生活のルーティーンを考えなければならないし、バイトも見付けなければならない。
その上、大学のスケジュールだって把握しなくてはならないのだから。

そんな感じで、私の高校時代は幕を引いた。
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