【短】分かって気付いて傷付けて…
「はー…なんで諦めちゃったんだろうねぇ…?」


ぬいぐるみを持って外に出て、あの日と同じ春の柔らかな風に、同じように柔らかく微笑んだ。


これを捨てたら、今度こそ忘れて、今私を見つめてくれている人と幸せになろう。
今度こそ、彼の影を追うのはやめよう。


そう思って、家の近くにある集積所へと歩いていくと…。


「煌…?」

ぎくり、とした。


何度も何度も、夢に出てくるほど焦がれた声。
それが、後ろから聞こえてきた。
私は振り向けずにいる。
だけど、その声の主は私の方へと徐々に近寄ってくる。

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