【短】俺のモノになりなさい
おぉ、こいつにしてはなかなかの切り返し。
けれど、一度捕らえた獲物を容易く逃がす程、俺はお人好しでもなけりゃ、甘くもない。

そして、優しくも。


「田代…」

「ん…や…っちょっと、野々村さん…っ…」

「お前が…好きだって言ったら、信じる?」

「…?!そ、そんなの信じられるわけっ…」

「んー…じゃ、嬉しいとも思わない?」


そう言うと、真っ赤になった彼女は視線を泳がせた。


「う。そ、れは……」

「よーし。決定。いい子で待ってたご褒美とお礼も兼ねてメシおごる」

「だ、だから、顔近いですってば!」

「いいだろ。俺はお前のこと好きな訳だし」

「もー!最低!」

「最低でもなんでもいい。腹減っただろ?さ。行くぞ」

「人の話聞いてくださいってば!」



べしべし!


背中を叩かれながらも、俺は行きつけの店の番号を携帯で検索して、席を確保した。

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