【短】俺のモノになりなさい
結局、予約していた店に着いたのは、時間より30分遅れ。


途中、フラフラの彼女が「時間を守れないなんて室長失格!」なんて騒いでいたけれど…構うもんか。


欲しいものを欲しいと思って何が悪い?
大体、据膳食わぬは男の恥、だろ。
だったら可愛いオーラ全開の彼女の方が悪い。


「ほら、悠衣…何が食べたい?」

「千紘さんにお任せします…」


別に大したことのない居酒屋だと言うのに、彼女は俺とは目を合わせずに、素っ気なくそっぽを向きつつそう言う。

そんな態度をされても、可愛いだけなのにな。
そう思って口元だけでくすりと笑うと、それが癪に障ったのか、彼女はキッとこっちを向く。


「やっとこっち見たな。淋しくて仕方ないから…俺を見てろよ、ずっと」

「騙されませんからね!」

「そんな顔しても俺にはきかないぞ?余計に欲しくなるだけだ」

「千紘さんは、キャラ違い過ぎませんか?!」

「そりゃそうだろ。お前の前だけだ。こんな顔見せられるのは…今夜は朝まで付き合えよ?」

「?!」

「まぁ…イヤと言われても帰さないけどな」

「?!?!」

折角運ばれて来た料理にも殆ど手を付けられずに、彼女は俺の顔をじっと見つめた後……小さく、


「ほんと、キャラ違い過ぎ…」


と、呟いて紅くなった顔を背けた。


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