Break
"いつもの店に7時ね"
月に数回の彼からのお誘い。
小さな期待を抱えながら、今日も薄暗いバーに足を踏み入れた。
いつだって彼は先にカウンターに座って、わたしの到着を笑顔で迎えてくれる。
今日だってそう。
危うく勘違いを起こしそうな気持ちを、ぐっと抑えて微笑み返す。
「お待たせ。もう飲んでるの?」
「まあね。来てくれてありがとう」
そんな言葉と共にまた、ふわっと笑う。
この笑顔を見られるのならいつだって来るわ。
もちろん、そんな言葉は彼に届けられることもないまま、静かに飲み込まれる。
そっと手で彼の左隣に座るように促されて、そのまま吸い込まれるように席に着く。
ここがあたしの特等席。
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