死にたい君に夏の春を
出てきたのは、カバーもなにも付けていないシンプルなスマホ。
九条が携帯を持っていることに驚いた。
彼女はそのスマホを僕の前に置いて。
「使い方わからないんだ」
「じゃあなんで持ってんだ?」
「お父さんの持ってきちゃったから。カメラは使えるんだけど、どうやって見るのかわかんなくて」
家を出る前に拳銃と携帯とピッキングツールを持ち出すなんて、どうやったらそんなことできるんだ。
「ちょっと貸して」
画面をスライドしてみると、簡単に開くことが出来た。
大体ロックを掛けてることが多いが、これはそういう設定をしていないらしい。
無頓着な人なのだろうか。
「このマークを押すと今まで撮った写真が見れるよ」
僕はアイコンを押そうとするが、
「あ、待って」
と言って彼女は、僕からスマホを奪い取りポチポチと画面を押し始めた。
見られてはいけないものがあったのだろうか。
「…………」
途端に、九条の表情が暗くなる。
それを見て、僕はどうしたらいいのか分からなくなった。
そんな重い空気で、場違いなアラーム音が部屋に鳴り響いた。
「た、食べようか」
雰囲気を変えようと、明るめに接する。
「あ……うん」
彼女はスマホの電源を消し、机に伏せた。
僕もタイマーを消し、お粥の蓋を開ける。
ふんわりと熱い水蒸気が顔を覆う。
ただでさえ暑い部屋の室温がさらに上がった気がした。
こんな夏に食べるものじゃなかったと、一口食べて後悔する。
九条が携帯を持っていることに驚いた。
彼女はそのスマホを僕の前に置いて。
「使い方わからないんだ」
「じゃあなんで持ってんだ?」
「お父さんの持ってきちゃったから。カメラは使えるんだけど、どうやって見るのかわかんなくて」
家を出る前に拳銃と携帯とピッキングツールを持ち出すなんて、どうやったらそんなことできるんだ。
「ちょっと貸して」
画面をスライドしてみると、簡単に開くことが出来た。
大体ロックを掛けてることが多いが、これはそういう設定をしていないらしい。
無頓着な人なのだろうか。
「このマークを押すと今まで撮った写真が見れるよ」
僕はアイコンを押そうとするが、
「あ、待って」
と言って彼女は、僕からスマホを奪い取りポチポチと画面を押し始めた。
見られてはいけないものがあったのだろうか。
「…………」
途端に、九条の表情が暗くなる。
それを見て、僕はどうしたらいいのか分からなくなった。
そんな重い空気で、場違いなアラーム音が部屋に鳴り響いた。
「た、食べようか」
雰囲気を変えようと、明るめに接する。
「あ……うん」
彼女はスマホの電源を消し、机に伏せた。
僕もタイマーを消し、お粥の蓋を開ける。
ふんわりと熱い水蒸気が顔を覆う。
ただでさえ暑い部屋の室温がさらに上がった気がした。
こんな夏に食べるものじゃなかったと、一口食べて後悔する。