死にたい君に夏の春を
「これ、あげる」


そのチョーカーを九条の目の前につき出す。


不思議なものを見るように、彼女は凝視する。


「首に付けるんだ。アザがまだ残ってるから、隠せると思って」


「…………」


驚いたように、口を開けてこちらを見る。


そして黙って僕の手から受け取った。


「……どうやってつけるの?」


僕は少し考えてから、チョーカーを取り返し九条の後ろに回った。


「髪、上げて」


彼女はボサボサな髪をポニーテール状に手に取る。


そして僕はそっと、その痛々しい首にチョーカーを回した。


細くて、すぐに折れてしまいそうな首だ。


こんな細い首に手をかけた父親に怒りを覚える。


留め具をつけて、肩をぽんと叩く。


「はい、ついた」


九条は髪を下ろし、人差し指で首を触る。


「どう?」


僕の方を振り返り、目を輝かせて聞いてきた。


「……いいんじゃない?」


「ふふ」


彼女は、嬉しさが零れるように笑う。


何度も首を触り、見えないチョーカーを見ようとする。


僕は何も言わずスマホの内カメラを開き、九条の前に見せた。


彼女はスマホの画面に写ったチョーカーに見入る。


「いいね。私、これ好き」


小さい三角モチーフのシンプルな物だが、気に入ってもらえてつい嬉しくなる。


「ありがと、高階くん」


満面の笑みで、そう言った。
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