死にたい君に夏の春を
「なんか、すごいどうでもいい話だね」


「ほんとどうでもいい話だ」


夏休みまでは話すらしなかった2人が自殺の方法について会話してるなんて、前までなら考えられないことである。


自殺は逃げ、なんて言うけれど今はそう思わない。


この世からの脱出手段だと僕は考えた。


病気で死ぬことだって、寿命で死ぬことだって、全部この世から脱出することなんだから、自殺もそう変わらない。


僕も、つまらないこの世界からおさらばしたい。


九条がいなくなってしまっては尚更だ。


1人になるくらいなら、一緒に……。


「ねぇ、花火しない?」


彼女は立ち上がり、いつの間に僕の前に立っていた。


「花火?」


「前、公園でやってる人がいたから、私もやりたいなーって」


いつも行動が急すぎるんだよな。


「いいけど、風邪はもういいのか?」


「ん?あぁ、気にしてなかった」


先ほどまで汗だくで辛そうだったのに、ケロリとした表情でいた。


もはや回復力が驚異的である。


あの熱から完治してしまうなんて、やはり並の人間ではない。
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