死にたい君に夏の春を
「じゃあコンビニで買ってくるか」


僕はそう言って立ち上がる。


「あ、私行くよ」


九条は僕の行くてを阻む。


一瞬不安な気持ちがよぎった。


もし彼女がコンビニに行っている間、何かあったら。


そんな不安になっている僕を見て彼女は言った。


「もしかして心配してる?」


「……あんな記事を見た後なんだ。少しぐらい緊張しろよ」


「大丈夫だって。行かせてよ」


何が大丈夫なのか、どんな確証があってそんなことを言っているのかわからない。


でも、怯えて閉じこもりたくないと言ったこと思い出し、何も言えなくなる。


「わかった……。でも心配だから一応……電話番号。交換しよう」


「電話?どうやって?」


スマホの操作方法が知らなければ、電話番号の交換のことを知らないのも無理はないか。


「携帯だして」


彼女のスカートのポケットから出されたスマホを受け取り、タップをする。


僕のスマホも取り出し、それぞれ連絡先に電話番号を入れて、彼女にスマホを返した。


「これでどうするの?」


「何かあったらここを押して。そしたら僕のとこに電話できるから」


九条はじっ、とその画面を見る。


「これならどこにいても高階くんと話せるんだね」


「まぁ……。必要な時だけにしろよ」


そういえば今まで女子と電話なんてしたことなかったな。


そうやって改めて言うと、交換した現実味を帯びてくる。
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