死にたい君に夏の春を
「さっさと準備しろよ」


「んー」


重い上半身を起こし、テントから出る。


彼女首には、僕のあげたチョーカーが付いていた。


「それ、付けながら寝たのか?」


「え?あー、外し方わからなかった」


ピッキングではあんなに器用なのに、なんでこういう時だけ不器用なんだ。


その違いがよくわからない。


「それに、高階くんがくれたものだから外したくなかった」


「……そ、そうか」


無自覚に言ったことなんだろうけれど、照れ臭い気持ちになる。


出掛けることを思い出し、彼女を催促する。


「朝飯食べたら行くぞ」


「うん」


九条はスカートについたシワをパッパッと伸ばし、屋上の階段を降りる。


このブカブカで、見るからに暑そうなセーラー服ともお別れだな。


せっかくだし、いいやつを買ってあげよう。


彼女と、僕のあげたチョーカーに似合う服を。


久しぶりの遠出は、なんだか少しワクワクする。


そう思いながら、彼女に続いて階段を降りた。
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