死にたい君に夏の春を


しばらく歩くと、大きなデパートに着いた。


様々な店が入っているから、種類に困りはしないだろう。


ネットで調べてここが一番いいって書いてあったし。


「どこいくの?」


「まず服を買いに行く。その制服をなんとかしないと自由に遊べないだろ」


デパートに入ると、涼しい風が感じられる。


中は人で賑わっていて、人混みが苦手な僕には入りづらい。


地図を確認し、エスカレーターに向かう。


「なんか、都会のプロっぽい」


「なんだそれ」


言い方はともかく、こなれた感じに見せれてよかった。


都会に来たことないなんて、死んでも言えないな。


僕達は服屋が立ち並ぶ3階にエスカレーターで昇る。


周りは慣れたようなファッションの人達ばかり。


僕も適当に着てこずに、おしゃれぐらいして来ればよかったと後悔する。


3階には婦人ファッションばかりあって、僕には居ずらい場所だ。


「買ってあげるから、好きなの選んで」


九条にそう伝えると、僕は財布を取り出す。


「高階くんが選んでくれるんじゃないの?」


「……いや、僕はそういうのわかんないし」


というか、今からでもここから出たい気分だ。


「私もわかんないし、一緒に行こうよ」


無理矢理手首を掴まれて、グイグイと女性だらけの空間に連れて込まれる。


嗅いだことないような匂いがするし、キャッキャとした雰囲気に飲み込まれそうだ。


九条はこういうとこに度胸があると、感心してしまう。
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