死にたい君に夏の春を


ワンピースと、それに合ったスニーカーを買った。


合計金額を見て目の玉が飛び出そうになったが、なんとかお金は足りた。


僕達はエスカレーターで1階まで降りる。


「これからどうするの?」


そういえば服を買った後どうするか決めていなかった。


インターネットで調べたりして、一応この辺に何があるかぐらいはわかる。


「ゲームセンターとか映画とか、移動遊園地とかあるらしいけど」


「なにそれ?」


「遊ぶところだよ」


「全部知らないから全部行こ」


欲張りな奴だ。


よく考えたら、都会で遊んだことの無い僕はどう自然に楽しんだらいいのかわからない。


漫画やアニメではよく省かれるシーンだから、参考にするものがなかった。


とりあえず映画に行けば、話題は広がるのだろうか。


「じゃあ、まず映画に行くか」


多分ここから歩いて5分ぐらいのところにあったはずだ。


僕らはデパートから出て、映画館に向かって歩いて行く。


2人で並んでいると、いきなり九条が静かに笑い出す。


「ふふ」


「なに?」


「この服で高階くんと歩いてると、なんだかニヤけちゃうね」


「そ、そう……」


思わず、彼女から顔を背けてしまう。


僕のこんな緩みきった顔、見せたくないと思って。
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