死にたい君に夏の春を


2時間、売店で買ったキャラメルポップコーンを食べながら映画を観る。


休日だというのに、このスクリーンにはあまり人はいない。


九条は少し前のめりになって、初めての映画館を存分に楽しんでいた。


僕はと言うと、デフォルメ化された猫がひたすら謎の生物と戦うというつまらない映画を観て、今、物凄く眠い状態である。


横目に彼女の姿を見ると、もしかして面白いんじゃないかと錯覚するが、スクリーンに目を戻すとそうでもない。


無名のオリジナルアニメじゃ、こんなものかと納得しようとする。


映画が終わり、スタッフロールが流れ出す。


最後は予想通り猫が勝って、世界の平和は守られたらしい。


ほぼ脳が寝ていたから、あまり詳細はわからないけれど。


気づけばスタッフロールも終わり、照明がつき出す。


「面白かったね」


楽しそうな彼女の顔。


その顔を見ることができただけで、僕は嬉しい。


「まぁ面白かったよ」


「次はどうする?どこ行く?」


余韻に浸るかと思いきや、割と切り替えが早いな。


僕はスマホの画面で時間を確認する。


「もう昼だし、ご飯でも食べるか」


「私シナモンロール食べたい」


「それはご飯じゃないだろ……」


えー、と文句を言う九条。


昼食は僕が決めることになった。


「じゃあ、ご飯食べ終わったらどうする?」


「うーん、そうだな……」


ご飯を食べ終わったらゲームセンターに行って、その後は移動遊園地に行ったり、九条が言うようにシナモンロールを食べに行こう。


そんな風に、僕らは今日の計画を立てていく。


楽しい、青春の計画を。
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