死にたい君に夏の春を
少年の決断
突然、目を覚ました。
起きなければ、という無意識の感情が脳を覚醒させる。
しかしそれと同時に、腕や頭、足の痛覚まで蘇ってくる。
目が動くが、体が全く動かない。
だんだん状況を理解してきて、九条のことを思い出す。
そうだ、九条が連れ去られたんだ。
早く、彼女を助けなければ。
起きようとするが、左手しか現状動けない。
その左手で、ズボンのポケット入っていたスマホを取り出す。
21時。
一体僕は何時間気を失っていたんだ。
こうしている間にも、彼女はきっと酷い有様になっているかもしれない。
いや、もしかしたらもう……。
そんな風に考えていると、目にじわりと涙が浮かんできた。
こんな僕だから、彼女は助からなかった。
僕のせいで、僕が撃たなかったせいで。
色んなことでぐちゃぐちゃになった意識の中、九条の携帯に電話をかける。
こんなの、僅かな期待だ。
電話をしたら、九条が何事も無かったように出てくれる。
またいつものように、冗談を言ってくれる。
そう、願っていた。