死にたい君に夏の春を
次の日の朝、栞はいなかった。
朝というか、もう昼の12時だけれど。
『すこしでかけてくる』という書き置きを残して、姿を消した。
最初は慌てたが、この書き置きを読んで安心した。
残ったひとつのカップラーメンを平らげ、呆ける。
すると、すぐに栞は帰ってきた。
「あ、おはよう」
「どこいってたの?」
そう僕が言うと、彼女は手に持っていた大きな黒い袋を後ろに隠した。
「ちょっとね。
それより、今日って夏祭りは何時なの?」
隠したものが気になるが、追求しても仕方が無い。
「たしか花火は19時半だけど、屋台はその前からやってるよ」
「そう。楽しみだなぁ」
彼女は大きな袋を僕から遠い所に置いて、こちらに来た。
夏祭りは僕は初めて行く。
こうやって栞と行けるとなると、すごく嬉しい。
「でも、クラスの奴らとか結構いるかもな」
「……それはやだなぁ」
会場が中学からも近いし、知り合いと遭遇する可能性は高い。
「屋台に仮面とか売ってたはず。それならきっとバレない」
「なんか、仮面で顔隠すのってかっこいいね」
「そうか?」
戦隊ものみたいでかっこいいと言いたいのだろうか。
栞でも意外とそう思うこともあるんだな。