死にたい君に夏の春を
両替した小銭を財布に入れながら織部は言った。


「あいつ何してんだろ」


「さぁ……」


ただ歩いてるだけなのに、疑問に思う。


関わりたくないのに、知りたいと思う自分がいたことに驚いた。


「なぁ、着いていかね?」


「は?」


「九条って普段何してんのか全然わかんねーじゃん。家特定したらおもしろいだろ?」


彼女の住んでる場所、昨日行った廃墟。


だめだ、着いて行ったら余計九条は……。


「行こうぜ」


だがそんなこと、織部には言えない。


まるで彼女を庇っているみたいになる。


……でも、また僕は見て見ぬふりをするのか。


自分が関わりたくないがために、九条を痛い目に合わせてしまうのか。
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