死にたい君に夏の春を
「うわ、まじか!」


リンゴを3つ手に取り、走り出した。


窃盗をしたのだ。


いとも簡単に、躊躇すらせず。


僕はその光景を見て衝撃を受け、失望した。


僕が元々彼女のことをどう思っていたのか、自分でもわからない。


だが何故か、窃盗をするような人だとは思わなかった。


あの日の夜、彼女は既に暴行という立派な犯罪をしていたというのに。


「捕まえろ!」


「お、おい!」


いつの間にか織部は走り出していた。


こいつが追いかけようとするのは、正義感からではない。


ただ織部は面白がっているだけだ。


九条のこの行動を、クラスの笑い話にするつもりなのだろう。
< 22 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop