死にたい君に夏の春を
九条は店と店の間に入り、僕達もそれを追いかけた。


ふと見た八百屋の店主は後ろを向いていて、まだ僕らにすら気づいてない様子だ。


角を曲がり、またもう1つ角を曲がる。


だが、九条を追いかけていたはずなのに、その姿は既に見当たらなかった。


「はぁ、はぁ……。どこ行った?」


クラスでは足の速い方である織部でも、追いつくことはできなかった。


彼は辺りを見回す。


「逃げ足の早いヤツだな……」


「まだ追いかけんの?」


「あー疲れた。もういい。ゲーセン戻ろうぜ」


そして織部は来た道を戻って行った。


でも僕はまだ、九条が逃げたであろう道をじっと見つめていた。
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