死にたい君に夏の春を
青春とは
あの出来事から、僕は時折ぼーっとすることが多くなった。
何をするわけでもなく、ただ空虚を見つめるだけ。
ずっと、九条との出来事について思い出す。
ゲームセンターに行ったあの日、九条は僕の言葉を聞いて何も言わず立ち去った。
不思議な感覚だ。
彼女の事を知れば知るほど、謎が多くなっていく。
なんだか、興味深い存在である。
気づけば8月18日。
夏休みはもう3分の2が過ぎた。
そういえば全く宿題に手をつけていない。
そろそろやり始めた方がいいと思い、カバンを探る。
だがしかし、ない。
国語や理科の冊子はあるのだが、夏休み前に配られたはずの数学のプリントがどこにもない。
家中探してみるが、あのたった5枚の紙が見当たらない。
……しまった、忘れた。
きっと教室のロッカーの中に置き忘れたのだろう。
宿題はやり忘れると倍に増やされるから厄介だ。
仕方ない。
不本意だが、学校まで取りに行くことにした。
約1ヶ月ぶりの制服を着て、外に出る。