死にたい君に夏の春を
「青春って、なに?」


え?


僕は彼女の方を見る。


いきなりの謎の質問に驚いた。


「本に書いてあった。学生は青春をするものだって」


青春。


その言葉は、僕には馴染みがない。


「そんなの、僕も知らないよ」


彼女は少し悩んで、こう言った。


「じゃあ、一緒探してくれない?青春を」


一体何を言っているのだ、この女子は。


あまりにも急で、頭が追いつかない。


「……どうして?」


でも、興味を持った。


ゲームセンターで会ったあの日も、同じことを思ったからだ。


「私、夏休みが終わったら死ぬんだ」


死ぬ?


死、死、死。


たった1文字の言葉を頭の中で反芻する。


だが何故か、僕にはわかってしまった。


彼女は『死』という言葉を、自殺の意味として言ったということを。
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