死にたい君に夏の春を
「それがなんで、青春を探すことに繋がるの?」


「死ぬまでに色んなことしたいって思って」


死ぬってなんだ。


彼女は死ぬって言葉を、当たり前のように言っている。


迷いもせず、ただ純粋に。


「どうして僕なんだ?」


彼女は、またその真っ直ぐな目で見て、僕に言った。


「私に似てるから」


純一無雑に、そう言った。


「似てないよ」


「似てる。だって、人生どうでもよさそうな顔してるから」


完全に見透かされていた。


僕と彼女は似ている。


そう思ったのは、僕も一緒だった。


何故だろう、いつもならすぐ断るはずなのに、彼女の願いを本気にしている自分がいる。


彼女が言ったように、こんな人生どうでもいい。


毎日同じような飯を食べ、同じような授業を受け、同じ時間に寝るだけのつまらない人生。


そんなどうでもいい人生なんだ。


だったら少しだけ。


彼女のわがままに付き合ってやってもいいかもしれない。


僕は言った。


「いいよ。どうせ暇だし」


僕の暗い部屋の扉が、開く音がした。
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