死にたい君に夏の春を
次の日の朝。
父が仕事で家を出た30分後、僕は着替えて外に出た。
相変わらず焼けるような暑さである。
風は吹いているが、太陽からの光が僕の皮膚を刺す。
廃墟のビルに着く頃には、もう既に汗だくだった。
狭い階段を登り、この前入った3階の部屋で止まる。
扉は半壊していて、部屋は丸見え。
覗いてみたが、そこに九条の姿はなかった。
よく見ると前回行った時より進化している。
ボロボロだがなんとか動かせそうな扇風機と電池式の電気ポット、床にはバスタオルが数枚ベッド代わりに敷いてあった。
粗大ゴミから勝手に引っ張り出してきたらしい。
でなきゃこんなに揃わないだろう。
しかし、こんな所で女子中学生が1人で寝泊まりしていては危険じゃないのか。
もし誰かが入ってきたら、一体どうするつもりなのだろう。
ふと、この前の夜のことを思い出す。
そういえば成人男性を血だらけにしていたな。
まぁ、あの九条なら大丈夫だろ……。
そんな気がしていた。