死にたい君に夏の春を
「もう来てたんだ」


後ろから声がして、一瞬体が跳ねるように驚く。


振り返ると、やはり九条の姿。


「お、おう。どこ行ってたの?」


本当に、気配を消しながら話しかけるのはやめてほしい。


軽く心臓が止まるから。


「コンビニ」


九条のその手には、カップ麺や水などが入ったビニール袋が2つあった。


彼女は僕を通り過ぎ、ビニール袋を机に置いた。


九条は少し考え事をして。


「ここ風通し悪いんだ。屋上いこ」


「屋上、あるんだ」


確かにこの部屋にエアコンはないし、窓は小さい。


だからこんな蒸し暑いんだと納得した。


「こっち」


先に彼女は上への階段を登り、それについて行く形で僕も登った。
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