死にたい君に夏の春を
屋上への扉は、さっきの部屋と同様にボロボロだった。
鍵がかけてあったのだろうけれど、もう意味をなさないくらい壊れている。
九条はドアノブに手をかける。
ギギギ、と音を発しながら扉を開けた。
それと同時に、涼しい風が僕の頬を撫でる。
「たまに夜はここで寝てるんだ」
確かに、屋上には似つかわしくないような小さなテントが張られていた。
何も言わず、ちょうど壁の影になるとこで僕と九条は座った。
屋上の柵の向こう側を眺める。
意外にもこのビルは高くて、街を一望することが出来た。
僕の住んでいるアパートや、小学校や、織部と待ち合わせた公園なども見つかった。
たまに田んぼがあって、そこだけ見ると田舎のような雰囲気である。