死にたい君に夏の春を
彼女の目は、さっきよりも暗くなったように感じた。


「だって、もう居ないから」


その言葉に、思わず僕は。


「同じ……」


そう言ってしまったことを、後で後悔することになる。


「やっぱ私たち、似てるね」


本当にそうなのだろうか。


僕と九条は似ているのかもしれない。


けれど、なにかが決定的に違う気がする。


彼女のことを少しずつ知ると、その違いが浮き彫りになってくる。


性格とか、友達がいるかどうかとか、そんなのではない。


彼女は僕よりも、もっと掴みどころのないような表情をしている。


今にも、この屋上から飛び降りてしまいそうなくらい。


そんな彼女が、僕は少し怖いと感じた。
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