死にたい君に夏の春を
僕は同情をした。


とても純粋すぎる彼女を、可哀想だと思った。


1つ気になったことがある。


お父さんはいつも私に厳しい、という言葉。


なにか引っかかる。


「父親はどんな人?」


恐る恐る聞いてみた。


そして、1番返して欲しくない回答がきた。


「なにか失敗したら一日中外に出してくれないし、物音たてたら私を叩くけど、それでも、ちゃんと心配してくれるいいお父さんだよ」


あまりにも衝撃的だった。


話を聞いてて、耐えきれない。


こんなに辛いのに、彼女はそれを幸せだと感じているのか。


僕と彼女との決定的に違う所は、これだった。


九条の顔は、俯いてて見えない。


「でもね、もうお父さんとは会わない」


「……どうして?」


彼女はゆっくりと顔を上げた。


「夏休みが始まった日、本気でお父さんに殺されそうになったの。だからここまで逃げてきた」


そっと、首に手を当てる。


今まで気にもしなかったが、その首にはうっすらと紫色のアザが出来ていた。
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