死にたい君に夏の春を
「殺される前に自分で死にたい。そう思った」


その言葉は重く、僕では受け止めきれないくらいだ。


首も、悲しそうな顔も、痛々しくてつい目を逸らしてしまう。


ビルの下にある木には、なんの種類だかわからない鳥が1羽だけ留まっていた。


行き場を出失った彼女のように、何処へも行けずただ留まるだけ。


「ねぇ。青春って、本当に見つけられるのかな?」


青春。


わからない、僕はそんなもの知らないから。


でも可哀想な彼女に出来ることは、一緒に青春をすることだけ。


不器用な彼女の、最期の願い。


「見つけてみせるよ。絶対に」


少しだけ、彼女が冷たく笑ったような気がした。
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