死にたい君に夏の春を
九条は銃を元の缶の箱に戻し、手を口に当てて少し考えるような動作をした。


「うーん、やっぱ青春ってお金が必要なのかな」


急だな。


「なんで?」


「お買い物したり、どっか遠くに遊びに行くことが青春なのかなって」


「……別にそんなことはないと思うけど」


「でも今日コンビニ行って、お金なくなっちゃった」


自分のお金のように言っているけれど、きっとあの夜盗んだ財布なのだろう。


一体あれからいくら使ったんだ。


あのカップ麺の量で、まだ足りないというのか。


「お金がないって……。そんなのどうしようもなくない?」


そしてなにか決意するように、彼女は立ち上がった。


「よし、銭湯いこ」


は?


「いや……。さっきのお金の話と関係ない気が」


「もう1週間も入ってないし、行かなきゃって思って」


話変わるのが早すぎるし、入ったのが1週間前って。


支離滅裂な発言に困惑する。


ツッコむ間もなく、彼女はタオルを持ったり準備を進める。


よく見ると、その手には二人分のタオル。


もしかして。


「ちょっと待って、僕も行くの?」


「?うん」


僕の意思は無視かよ。


なんだか面倒なことになってきた気がする。


こんなことになるくらいなら、やっぱり約束なんてしなかった方が良かったかもしれない。
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