あの頃、きみといくつもの朝を数えた。―10years―
きみと迎えた10年後の朝





あれからいくつの季節が流れただろう。

――俺は今年、27歳になった。



忙しなく行き交う人の波に逆らいながら、俺はショーウインドーの前で足を止める。


ガラスに反射して映るスーツ姿の自分。大学を卒業して広告代理店に就職した俺は今、大きなイベント企画のチームに入り、会社でデスクワークをするよりも営業回りが多くなった。


高校生の頃、人に頭を下げる仕事だけはやりたくねーなって、ぼんやりと考えていた時期もあったけど、どうやら俺は自分が思っていた以上にコミュニケーション能力が高かったようで、人と会ったり接したりすることは全然苦ではない。

むしろ今の仕事にやりがいも感じてる。




「パパー」


と、その時。ピンク色のダッフルコートを着た小さな天使が俺の元へと走ってきた。



「パパに買ってもらったコート着たの。可愛いでしょ?」

「うん。世界で一番可愛い」

「へへ」


ひょいっと小さな身体を抱き上げると、成長の重さを感じた。


この前までは『あー』とか『うー』とかしか言わずに床を這っていたっていうのに、今では人混みでも上手に歩けるようになり、口もこんなに達者になった。

< 1 / 8 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop