あの頃、きみといくつもの朝を数えた。―10years―
きみと迎えた10年後の朝
あれからいくつの季節が流れただろう。
――俺は今年、27歳になった。
忙しなく行き交う人の波に逆らいながら、俺はショーウインドーの前で足を止める。
ガラスに反射して映るスーツ姿の自分。大学を卒業して広告代理店に就職した俺は今、大きなイベント企画のチームに入り、会社でデスクワークをするよりも営業回りが多くなった。
高校生の頃、人に頭を下げる仕事だけはやりたくねーなって、ぼんやりと考えていた時期もあったけど、どうやら俺は自分が思っていた以上にコミュニケーション能力が高かったようで、人と会ったり接したりすることは全然苦ではない。
むしろ今の仕事にやりがいも感じてる。
「パパー」
と、その時。ピンク色のダッフルコートを着た小さな天使が俺の元へと走ってきた。
「パパに買ってもらったコート着たの。可愛いでしょ?」
「うん。世界で一番可愛い」
「へへ」
ひょいっと小さな身体を抱き上げると、成長の重さを感じた。
この前までは『あー』とか『うー』とかしか言わずに床を這っていたっていうのに、今では人混みでも上手に歩けるようになり、口もこんなに達者になった。
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