あの頃、きみといくつもの朝を数えた。―10years―
「いいよ。俺もさっき着いたばっかりだったし」
おそらく三鶴も仕事帰りで、駅前で岸と優月と待ち合わせして合流したけれど、そのまま買い物に付き合わされてたって感じだろう。
「もう、ママなんて嫌い!」
優月が叱られて半べそをかきはじめたところで、俺はバトンタッチをするように小さな身体を三鶴に預けた。
「ほら、本物のパパのところに行け」
欲しいおもちゃがある時にだけ優月は俺のことをパパと呼ぶ。そうすれば俺がなんでも買ってくれることを知っているからだ。
「やだー。しゃはらがいい!」
ペラペラと口は達者なのに、何故か佐原がいまだにうまく言えない。
まあ、そこも伯父としては目に入れても痛くないほど可愛いんだけど。
「もう、兄ちゃんが甘やかすからだよ」
「いいだろ。たまにしか会えないんだから」
そう言い返しながら、俺たちは事前に予約していた創作料理の店に向かった。