あの頃、きみといくつもの朝を数えた。―10years―




ふたりの馴れ初めははっきりと聞いてない。

高校に入学した当初から三鶴が岸のことを気になっていたことは知ってた。でも岸はなんとなく純粋な三鶴に対して苦手意識があったし、三鶴がどんなにアプローチしてもことごとく交わしていた気がする。


たぶん、そんなふたりが付き合いはじめたのは、岸が高校を卒業したあとのことだと思う。


岸は美容の専門学校に進み、一年遅れで三鶴も大学へと進学。

お互いに勉強が忙しくなったことで距離が離れたけれど、逆に岸が寂しく思うようになり、ようやく両想いになったのだろうと俺は勝手に想像してる。


それからふたりは順序をしっかりと踏んで結婚。そして二年前に優月が生まれた。


頑固で譲らない性格は岸に似ていて、なんでもスポンジみたいに吸収して賢いところは三鶴にそっくり。



「ねえ、しゃはら、しゃはら」


あと、ふいに海月の面影も感じることがある。

本当に本当に、愛らしい存在。



「言っとくけど、お前もしゃはらなんだぞ」

「えー?」


優月は無邪気にケタケタと笑っていた。


優月がリクエストした唐揚げと炒飯が運ばれてくると、覚えたての箸で一生懸命食べようとしていて、こうして少しずつ成長していく姿を近くで見守っていけたらと思ってる。


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