one Love 〜知らなかった恋する気持ち〜
ったく……。
どこほっつき歩いてんだ? 桃香の奴……。
映画館を出て正面入り口まで出ると、上映が始まった映画が多いせいか、さっきより人の賑わいがなくなっていた。
辺りを見渡すと、桃香らしき姿は見当たらない。
ここにはいないと判断を下し、映画館をあとにする。
『スマホって、やっぱり持ってた方がいいですよね……?』
不安げにそう言った、この間の桃香が頭をよぎった。
早いとこ持たせときゃ、確かにこんなことになってなかっただろうけど……。
でも、電話なんかに頼らなくたってアイツを捜し出すくらい……。
館内を一通り歩き回り、建物の外へと出て行く。
湿った潮風が肌にまとわりついた。