one Love 〜知らなかった恋する気持ち〜
外まで勝手に出てくか?
そんな疑問を抱きながら、行き交う人並みに目を凝らす。
海が見渡せる広場に出ると、人の多さに嫌気がさした。
まさか本気で見付からないとか……冗談だろ?
引き返して、もう一回中を捜した方がいいかもしれない。
そんな風に諦めかけたその時、うじゃうじゃいる人の中に、絹のような長い髪の後ろ姿が目に飛び込んだ。
いた……。
咄嗟に駆け出す。
が、すぐに足は止められた。
桃香の姿に違和感を感じる。
……は?
誰だ、あのオッサン……。
広場から階段を降りていく桃香。
その背中を、見知らぬ中年男が連れ去るように押している。
あのバカ……。
人気(ヒトケ)のない道に消えていく桃香を追って、俺は再び駆け出した。