one Love 〜知らなかった恋する気持ち〜
い、行っちゃった……。
じゃあやっぱり……私、上手いこと言われて騙されかけたってことに……。
おじさんが逃げてく姿を見つめながらそんなことを思っていると、ポカッと頭を叩かれた。
「わっ」
「……バカか」
「えっ……」
見上げると、理玖くんが綺麗な顔をムッとさせて私を睨み付けている。
目を合わせた途端、ほっぺをむにっとつままれた。
「……一体、何やってるわけ?」
「え……」
「あのオッサンと、どこ行こうとしてたわけ?ってきいてんの」
「え、それは、あの……」
痛いっ、りっ、理玖くん!
痛いですー!
「私はっ、あの、道に迷って……それで」
「……それで?」
「それで、映画館に連れて行ってくれるって、あの人が……」
ことの成り行きをそう話すと、理玖くんは深いため息と共につねる手を離した。
怒られる!
理玖くんの曇った表情に次の言葉を覚悟すると、理玖くんはそっと私の頭に手を添えた。