one Love 〜知らなかった恋する気持ち〜
一本の電話 *理玖*
「何? 何の電話?」
「あぁ、アイツだよ、加山。大学ん時の」
「あー! 加山くん! 久しぶりね?」
夏休みも終わりに近付く、八月後半。
日曜の昼は毎週、うちのリビングは何かと騒々しい。
「えぇ⁈ それ、OKしちゃったの?」
ほら……やっぱり騒がしい。
ほとんどの確率で騒ぎ立てるのは母親。
いい歳してリアクションがでかすぎる……。
「久しぶりに電話かと思えばそんなことでさ……まいったな……」
「まいったって……いいって言っちゃったんでしょ?」
「あぁ……」
「もうっ……何で即答しちゃうのよ?」
「だって、ダメとも言えないだろ? 断る理由もないし……」
「まぁ、そうだけど……」
両親の言い合う声の中、ガチャンと派手にドアが開けられる音がリビングに響いた。
「あっ、いたいた! お兄ちゃん!」