one Love 〜知らなかった恋する気持ち〜
からかうような意地悪な言い方をし、理玖くんは私に背を向ける。
座り込んだまま動けない私をクスリと笑い、「まぁ頑張って」と吐き捨てた。
ドアに近付くスラリと高い後ろ姿を目に、胸の奥が握り潰されるように締め付けられる。
脳裏に、この間見た理玖くんと柏木さんの映像が蘇った。
待って……。
どうして……?
だって、理玖くんは――。
「――待ってください!」
「……?」
私の上げた声に理玖くんの足が立ち止まる。
振り返った理玖くんは、何の感情も読み取れないような無表情な顔をしていた。
息を呑む。
勇気を出して、こっちを見つめる理玖くんの目を見つめ返した。
「何で……私にこんなことするんですか?」
言った瞬間、部屋の中の時間が止まったような錯覚を覚えた。
そらさず理玖くんを見つめ続ける。
答えを待って息を止めていると、見つめる理玖くんの表情が意味深に微笑んだ。
「何でって……したかったからだけど?」
爽やかスマイルでサラリとそう言い、ドアの向こうへと消えていった。