one Love 〜知らなかった恋する気持ち〜
開いた扉の先に立っていたのは、学ランを誰より着こなす長身……理玖くん。
目が合うと、フッと笑って教室に入ってきた。
部屋の奥の隅っこで、床に台本を広げる私に向かって近付いてくる。
「いよいよ本番だな?」
そう言って私を見下ろす理玖くんを見て、この間の夜のことを思い出す。
『したかったからだけど?』
――ドキン……ドキン……。
微笑を浮かべる目の前の理玖くんがあの晩とリンクして、胸の鼓動を一気に高鳴らせ始めた。
「……で、調子はどうなの?」
「え……それは……」
「……何だよ、その調子じゃ微妙って感じそうだな?」
緊張が隠しきれない私を、理玖くんは完全に見透かしている様子。
黙って俯くと、理玖くんはそんな私を鼻で笑った。