one Love 〜知らなかった恋する気持ち〜
やっぱり、私に主役なんて大役、できるわけないよ……。
まだ始まってもないのに、緊張で吐きそうになってくる。
時間が刻々と過ぎる中、その時が近付けば近付くほどやりきれない気がして仕方ない。
どうして私がこんな目に……。
最終的にはそんなことを思うまで追い詰められ始めていた。
「桃香?」
頭上から理玖くんの声が降ってくる。
項垂れる顔を上げて理玖くんを見上げると、理玖くんは目線を合わせるようにその場にしゃがみ込んだ。
目が合っても、浮かない顔を消し去れない。
誤魔化せない自分の暗い顔に嫌気が差した時、俯こうとする私に理玖くんが微笑み掛けた。
「そんな顔すんな」
え……?
どこか優しい笑みを浮かべ、じっと顔を見つめてくる理玖くん。
手を伸ばして私の腕を掴むと、真っ正面からいきなり抱き締められた。