one Love 〜知らなかった恋する気持ち〜


舞台へと出ると、照明のライトで観客の顔は全く見えなかった。

まるで一人ぼっちになったような錯覚に陥りながら、頭に叩き込んだセリフを喋る。

不安と緊張でいっぱいだったはずなのに、いざ本番が始まってみると、不思議とセリフはスラスラと口から出てきてくれるものだった。

他の役のクラスメートが舞台上へ出てくると、少しずつ緊張が和らいでくる。

魔女にリンゴを手渡され、私が演技するのも残りわずか……。


「美味しそうなリンゴ……」


そのセリフの直後、私はバタッとその場に横たわった。

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