one Love 〜知らなかった恋する気持ち〜


改めて言って、また涙が出そうに込み上げてきた。

それを振り払うように、くしゃりと笑って誤魔化してみる。


「アイツ、そんなこと……」

「理玖くん、優しいから……だから、私のこと、気に掛けてくれてたんだよ……」

「桃ちゃん……」


その優しさは、好きだとか嫌いだとか、そんな感情の元にあるものじゃない。

理玖くんは、純粋に私を気に掛けてくれてただけ……。


だから……。


「あ、でも、勘違いしないください。私が宮城に帰るのは、理玖くんのせいとか、そんなんじゃないから」

「でも」

「このままじゃ、浪人しちゃいそうだし……」

「……本気なの? 桃ちゃん。本気で……帰るつもりなの?」

「うん……」


純太くんに話しながら、自分に言い聞かせているような気分になっていた。


理玖くんのそばにいたら……。


心の中にある本当の理由は、純太くんに話すことはもちろんできなかった。

このことは理玖くんには黙っていてほしい。

最後にそれだけ、お願いした。

< 354 / 405 >

この作品をシェア

pagetop