one Love 〜知らなかった恋する気持ち〜


「まだ……間に合うわよ?」


じっと真っ直ぐ、真剣な面持ちで俺の顔を見つめる母親。

何を言いに来たかと思えばそんなこと。

リアクションに困って目をそらすと、何がおかしいのかフフッと笑われた。


「何があったかは知らないけど……行かなくていいの?」

「…………」

「桃香ちゃん、突然帰るなんて言い出して、おかしいじゃない?」


事情までは知らないかもしれない。

でも、俺らの間で何かあったとわかっているような、母親はそんな口振りでそう言った。

チラリと目を向けると、弱った笑顔を作って俺を見つめ続けている。

その視線に耐えきれず、拒絶するように背を向けた。


「ねぇ……理玖?」

「…………」

「本当は……引き留めたいんじゃないの?」

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