one Love 〜知らなかった恋する気持ち〜


「…………」

「って……そんなこと私が聞いても、あなたは『はい、そうです』って、素直に言う子じゃないわよね?」


わかってんじゃん……。

なのに、何でそんなこと……。


「お母さんも昔ね……あなたと同じくらいの頃、会えなくなりそうな男の子を追いかけたことがあったわ……」

「…………」


振り返ると、母親は俺を見るのをやめて、ドアの近くの小窓から外を眺めていた。

その横顔は、物思いにふけるような、そんな表情をしている。

俺は黙って、その姿を凝視した。


「結局は、それが最後の別れになっちゃったけど……でも、あの時追い掛けて、私はよかったなって、今も思ってる」

「…………」

「あの時、なりふり構わず追い掛けて、よかったな…って……」

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