one Love 〜知らなかった恋する気持ち〜
「えっ……」
「だから、変な心配しなくても、大丈夫ってこと」
「あっ、待ってください!」
「何だよ、誰も見てないって」
軽く流しながら見下ろす顔に近付こうとすると、「見てます!」なんて強い口調と共に、バフッと視界が覆われた。
「ロールダックスが見てます!」
「…………」
こっの……
ロールケーキダックス……。
ぬいぐるみで俺をガードして、その隙にスルッとソファを抜け出す桃香。
立ち上がると、ギュッとぬいぐるみを抱き締めて、照れた顔に笑顔を浮かべた。
「ロールダックスもケーキ食べたいって」
「……は?」
「いただきましょう! おばさんがせっかく用意してくれたんですし!」
そう言って、スタスタとテーブルに向かって歩いていく。
おいおい……。
台無しだろ、雰囲気。
空気読めって……。
って……。
まぁ、いっか……。
いつの間に俺をかわす技を身に付けた?なんて思いながら、桃香らしい照れ隠しについつい和んでしまう。
焦る必要なんかない。
これから先、いくらだって時間はある。
もう、
手放すつもりはない……。
絶対に……。
「理玖くん! 来てください!」