締め切り?
サエは都電東福線の音舞駅から3駅先の飴浜駅に行かねばならなくなった。
まるながでは急な取材先変更があるのは日常茶飯事だし、先輩も幾度となく通ってきた道。サエにとっては”急変更”は初めてのことで対処に一瞬戸惑ったがまだ音舞駅周辺のどこにも取材アポはとっていないことに気づき、少しホッとした部分もあった。
サエが今回担当する記事は、経済・金融の欄で貿易関連の大手商社ハナブサ商事にスポットを当て当社の取り組みや展望など盛り込んでいく。ハナブサ商事のある飴浜駅から程近い飴浜港には毎日何便もの貿易船が就航する。ハナブサは主としてイギリスと輸出入の業務提携をし英語で綿密な連絡を取れる精鋭ぞろいである。福田編集長はサエにハナブサ商事副社長の田中と飴浜港で会うようアポを取った。
(会社のロビーかどっかで会うイメージをしてたのに。貿易船から降りてくるのかな田中副社長。)11月ともなれば、日が暮れるのも早くなる。あたりは薄暗くなってきたが、ここは港町、灯台の明かりが多いせいかサエはなんだが落ち着いて待っていられた。波はそれほど荒れていないが肌を刺す潮風を運ぶ。
![](https://www.berrys-cafe.jp/img/member/1065601/co58fyqqbm.jpg)
サエが飴浜港に着いて30分近くたったころだろうか、大きなコンテナを幾つも幾つも積んでいる一台の外国船の前で、書類を見ながら歩いている人がいた。
誰かを探しているのか目の前の船に用があるのかサエは暫しの間だけ男の様子を見て確認を取ろうと思った。今度は、明らかにエグゼクティブ仕様な感じのするベンツが男のそばに停まった。夜は7時をとっくに過ぎていて大規模な港の照明があるとはいえ、やはり薄暗い。夕食の時間帯で港湾関係者たちは、近くの創業20年ぐらいは経ている感じの佇まいのラーメン屋に入っていく。
(私もお腹すいてきたよう。まわりに人はいるけど、作業服を着た港湾の人しかいないし。間違いなくあの人たちだよなあ。)サエは、もし人違いだったらなどと思い様子を見ていたが、時間の都合もあり早足で近づいた。
コッコッコッ...
「あのぉ。。。わたくし、まるなが編集所の猫田と申しますが、人違いでしたら大変申し訳ございません。ハヤブサ商事の田中さまでいらっしゃいますか?」
サエは、日常のお客様への対応はどちらかといえばラフでギコチナサモ残る。
入社2年目というのもあるかもしれないがリリからは常々指導を受けている。でもこの時ばかりは、いつになく丁寧にソフトな印象を与えようという配慮が感じられた。田中の斜め後ろに停まるベンツが微量の圧迫感といおうか緊張感を出していたこともあるが。
「あ、お待たせしてすみませんね。わたくし、ハナブサ商事の渉外部の田中正と申します。もう今日は遅いですしね、ご挨拶も含めまして夕飯をご一緒しませんか?お話の続きはその時お伺いしますから。ハハ」
サエは、見た目で人のことを色々決め付けたりはいけないと思っていたが、初めて会った田中を見てもしも白衣を着ていたら“化学の研究をしている博士“のような容姿に見えた。田中の静かでやさしそうなトーンにサエは心落ち着き、お腹がすいていたこともあって夕飯のお誘いは嬉しかった。
(このベンツで一緒に行くのかな。後部座席ににわたしと同じ年ぐらいの子がいるんだよなあ。誰なのかな。)
まるながでは急な取材先変更があるのは日常茶飯事だし、先輩も幾度となく通ってきた道。サエにとっては”急変更”は初めてのことで対処に一瞬戸惑ったがまだ音舞駅周辺のどこにも取材アポはとっていないことに気づき、少しホッとした部分もあった。
サエが今回担当する記事は、経済・金融の欄で貿易関連の大手商社ハナブサ商事にスポットを当て当社の取り組みや展望など盛り込んでいく。ハナブサ商事のある飴浜駅から程近い飴浜港には毎日何便もの貿易船が就航する。ハナブサは主としてイギリスと輸出入の業務提携をし英語で綿密な連絡を取れる精鋭ぞろいである。福田編集長はサエにハナブサ商事副社長の田中と飴浜港で会うようアポを取った。
(会社のロビーかどっかで会うイメージをしてたのに。貿易船から降りてくるのかな田中副社長。)11月ともなれば、日が暮れるのも早くなる。あたりは薄暗くなってきたが、ここは港町、灯台の明かりが多いせいかサエはなんだが落ち着いて待っていられた。波はそれほど荒れていないが肌を刺す潮風を運ぶ。
![](https://www.berrys-cafe.jp/img/member/1065601/co58fyqqbm.jpg)
サエが飴浜港に着いて30分近くたったころだろうか、大きなコンテナを幾つも幾つも積んでいる一台の外国船の前で、書類を見ながら歩いている人がいた。
誰かを探しているのか目の前の船に用があるのかサエは暫しの間だけ男の様子を見て確認を取ろうと思った。今度は、明らかにエグゼクティブ仕様な感じのするベンツが男のそばに停まった。夜は7時をとっくに過ぎていて大規模な港の照明があるとはいえ、やはり薄暗い。夕食の時間帯で港湾関係者たちは、近くの創業20年ぐらいは経ている感じの佇まいのラーメン屋に入っていく。
(私もお腹すいてきたよう。まわりに人はいるけど、作業服を着た港湾の人しかいないし。間違いなくあの人たちだよなあ。)サエは、もし人違いだったらなどと思い様子を見ていたが、時間の都合もあり早足で近づいた。
コッコッコッ...
「あのぉ。。。わたくし、まるなが編集所の猫田と申しますが、人違いでしたら大変申し訳ございません。ハヤブサ商事の田中さまでいらっしゃいますか?」
サエは、日常のお客様への対応はどちらかといえばラフでギコチナサモ残る。
入社2年目というのもあるかもしれないがリリからは常々指導を受けている。でもこの時ばかりは、いつになく丁寧にソフトな印象を与えようという配慮が感じられた。田中の斜め後ろに停まるベンツが微量の圧迫感といおうか緊張感を出していたこともあるが。
「あ、お待たせしてすみませんね。わたくし、ハナブサ商事の渉外部の田中正と申します。もう今日は遅いですしね、ご挨拶も含めまして夕飯をご一緒しませんか?お話の続きはその時お伺いしますから。ハハ」
サエは、見た目で人のことを色々決め付けたりはいけないと思っていたが、初めて会った田中を見てもしも白衣を着ていたら“化学の研究をしている博士“のような容姿に見えた。田中の静かでやさしそうなトーンにサエは心落ち着き、お腹がすいていたこともあって夕飯のお誘いは嬉しかった。
(このベンツで一緒に行くのかな。後部座席ににわたしと同じ年ぐらいの子がいるんだよなあ。誰なのかな。)
![](https://www.berrys-cafe.jp/img/member/1065601/5aovyulwxk.jpg)