大江戸シンデレラ

されども……

舞ひつるはそっと目を伏せた。

兵馬に玉ノ緒とのことを訊くからには、あの日舞ひつるが明石稲荷の小堂の陰に隠れて、こそこそと聞き耳を立てていたことを告げねばならぬ。

舞ひつるがそないな卑しきおなごであったことを、兵馬に白状せねばならぬ。

——きっと、若さまから愛想(あいそ)を尽かされなんし。


それでも……

やはり、兵馬に訊いてはっきりとさせておかねばならぬ、と舞ひつるは思い直した。


——若さまがお云いなんしたように、
わっちらが逢えるのは……

今夜が最後でありんすゆえ……


さんざん思いを巡らした挙句、
ようやく——舞ひつるの(はら)が決まった。

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